日本刺繍 紅会

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日本刺繍について

▽繍の移りかわり

▽刺繍の文様・糸・技法

▽刺繍をするに当たってのQ&A(アトランタ日本刺繍センターより)



刺繍をするに当たってのQ&A(アトランタ日本刺繍センターより)

様々な異なる習慣や文化を持つ方々に、日本刺繍を通して毎日のように出会う私達(アトランタ日本刺繍センター講師陣)ですが、日本刺繍を初めて目にする方、そして日本刺繍に携わる私たち一人一人の心に、たくさんのつぶやきあることを、日々感じずにはいられません。例えば、展示会などで初めて日本刺繍を目にする方が「わー、細かいですね。」「私は忍耐力がないから…」「これ一つ仕上げるのにどれぐらいかかるんですか。」とおっしゃるのを聞いたことはありませんか。また、日本刺繍にすでに携わる私達も、「私は不器用だから」「何年やってもうまくならない」などと、知らない間に心の中で呟いていることがあります。不思議なことに、どの国に行っても、皆さんが共通に感じることがあり、そして、これらのつぶやきは、時に私達が日本刺繍を営む道のりを阻んでしまうことがあるように思われます。 また、日本刺繍講師として、日々生徒の皆さんと関わりをもたせていただく私達は、それぞれに異なったつぶやきを持ちながら、刺繍がうまくはかどらずに苛立つ方、落ち込む方、雑でも気にせず繍い進める方、また、完璧にできるまで繍ってはほどき続ける方等、様々な個性を持った方々に出会います。その中で、どのように講師として、そして同伴者として、お一人お一人の傍らに寄り添い戸惑いを和らげ、励まし、そして憧れや楽しさを共有することができるでしょうか。 海外では、以下のようにQ&A(質問と答え)を用いて、講師や生徒の皆さんと分かち合う時間をいただいています。

Q:私は不器用だから…
A:日本刺繍は専門職の高度な技術、上手は時間が運んでくれる。
日本刺繍は専門職の高度な技術で難しいと言われていますが、どんな大作も、高度の作品も、一針一針の積み重ねにすぎません。確かに日本刺繍は長い歴史の中で独自の高さに至りましたが、刺繍自体はいつの時代にもどこの国にも存在し、最もシンプルな針と糸を用いた誰にでも出来る手の仕事であることには変わりありません。最初は上手に繍おうとするのではなく、教わった通り正しくぬうことを心がけて下さい。洗練されたカリキュラムに添って一つひとつ確実に仕上げてゆくことで、時間の経過と共に自ずと技術は向上してゆきます。上手は時間が運んでくれます。

器用は努力の成果、才能とは努力する能力
「私は不器用だから刺繍はできない」と決めてしまうのではなく、自分の内にある無限の可能性をもっと信じてあげてください。器用を自負する方は、何でも上手に表面的にこなせるため、究めることなく事態を侮りやすいことを自らに戒めてください。逆に不器用な人はなんでもそれほど簡単に出来ない、多くのことがこなせない。広く浅く何も成就しない係蹄(わな)に陥り易い器用貧乏の人生ではなく、不器用だから一つのことに集中するしかない。不器用だからこそ集中ができ、一つのことを成就出来たことを、これまでの達人たちが教えてくれています。才能とは努力する能力です。

Q:もう少し若かったら…
A:刺繍を始める時期…ナンバーワンではなくオンリーワンの作品。
いま刺繍と出会い刺繍をしてみたいと思うに至るまでに、これまでの歳月が必要だったのではないでしょうか。思いや願いが成熟するにも時間が必要です。また、出会いは人にはつくれません。思い到った時が、出会うことが許された今が始める機会なのではないでしょうか。国内外の会員の方々には若い方に混じり定年になって始める方も多くおられ、上手下手や器用不器用にこだわるのではなく、人生の年輪を経てきたからこその味わい深い作品を制作しています。ナンバーワンではなく、オンリーワンの作品をつくってください。

Q:目がよく見えないから…
A:視力の衰え…しっかり度の合っためがねが必要。
新聞の文字を読む事に比べ日本刺繍は小さな針の穴に糸を通すことから始まる細かい仕事ですから、しっかり度の合っためがねが必要です。又、細かい仕事をすると目が悪くなることはありません。むしろ眼の周辺の筋肉をよく使い鍛えることになり、視力の衰えを防いでくれます。

Q:日本刺繍は高価だから…
A:日本刺繍は高価、刺繍作品の殆どは人件費。
出来上がった刺繍の作品は生地も糸の正絹で大変高価ですが、一針ひとはりの営みは多くの時間がかかり、作品の市場価格の殆どは人件費です。ご自分で楽しみながら制作するのですから、個人の負担は受講料と材料代そして初回の道具代です。授業料は自己投資であり道具類は刺繍台や針等の初回のみ。材料代は海外での場合、月に換算すると約$50~$100で、仕上がった刺繍作品は市価の一割程度です。しかも人生の時を刻んでぬった作品の一点一点が成長の過程として残り、末永く語り継がれてゆくことでしょう。

Q:忙しくて、今は刺繍をする気にならない。
A:でも、何をするにも、たくさんのことは出来ません。一つのことに集中する必要があります。日本刺繍も又、片手間にできるものではありません。現在、殆どの会員の方々が小さな時間をつづり合わせて、刺繍の作品を一点一点制作しているのが現状です。誰もが一日24時間、全ては条件にすぎません。日々の些事に忙しいからこそ刺繍を通して人間回復のリズムを取り戻し、喧騒の中だからこそ静寂なゆとりある時を刻む。内を見つめ、内と外をつなげることで本当の自分を見出してゆく歩み、それが繍の道。 時間とゆとりは、自らがつくりだすものです。